この度は、三原屋のウェブサイトを訪問いただき有り難うございます。
三原屋は信州善光寺の西界隈で味噌と醤油を製造している小さな醸造蔵です。
創業が嘉永元年で170年余の歴史がありますが、代々生産規模を広げずに堅実な経営を心がけてきました。
私が若かった頃には、そのような経営方針は時代遅れとばかり思っておりましたが、歳月を経てそれは大きな間違いであることに気がつきました。
三原屋の登録商標は「高原乃華一心」といいます。
大自然に身を委ねて咲く花の姿は敬虔で潔く、身土不二の象徴のように思えます。
けれども、その本質を変えずに商品化することは永遠の課題なのかもしれません。
人類は手づくり料理を食べて進化してきました。
味噌醤油の食体験を通じて、身土不二の真理が遍く人々の心に伝わることを衷心から願ってやみません。
株式会社 三原屋
代表取締役 河原清隆
身近な場所で採れた旬の食材を食べることが健康に良い・・・とする食養思想を「身土不二」と呼びます。私たちの身体も生態系をつくる土壌も微生物で出来ており、その両者を結びつけるのが発酵食品の役割なのではないか・・・いつしか、私はそのように思うようになりました。
今世紀になってヒトの体は37兆個の細胞と、数百兆匹もの微生物の働きで出来ている生命体であることが明らかにされました。毎日のように食べ物と一緒に無数の微生物が消化管を通り抜けている一方で、ある種の微生物から見れば人間は住居を提供する大家さん(生物学では宿主といいます)なのかもしれません。このような共生関係は何億年もの歳月をかけて築かれてきたようですが、ここ数世代の間に飲食に関して「身土分離」が急速に進行しているのではないかという気付きがあります。科学的には証明されていませんが、いくつか具体例を挙げてみましょう。
最初は、人類は手づくり料理を食べるように進化してきた・・・という仮説です。いつの間にか都市に住む私たちは、日常生活から微生物を排除することにすっかり慣れてしまいました。食品も例外ではありません。思えば1980年代に大型冷蔵庫と電子レンジが普及して、食の分業体制が海外にまで広がります。時を同じくして、花粉症や食物アレルギーなどの免疫疾患が社会問題になり始めました。加工食品の普及は、単なる偶然の出来事だったのでしょうか?
次に身土不二には微生物の多様性が重要だという仮説です。1gの健康な土には800万種もの微生物が棲んでいます。これに対して、汚染された土では8千種に減るのだそうです。生命の多様性が何と99.9%も消えてしまいました。ヒトも腸内細菌の多様性を失うことがありますが、そのとき何が起こるのでしょう?腸内細菌を持たない無菌マウスは無菌食で育てられますが、感染症に罹ると過度の拒絶反応で死んでしまうことが知られています。食べ物と一緒に消化管を通過する八百万の微生物が、免役細胞の暴走を抑える教育係の役割を担っているのかもしれません。
最後に、味噌や漬物などホームメイドの発酵食品は「手前味噌=食べるワクチン」なのかもしれないという仮説です。人類は定住するようになってから、感染症のリスクが高まりました。その頃から発酵食品は免役細胞の働きを助ける役割を担ってきたと思うのです。発酵菌が他の微生物を程よく分解するプロセスは、免疫細胞の働きと本質的に違いはありません。微生物を排除するのではなく、食べて同化する。非自己を摂取して、初めて自己を認識する。以上のような身土不二の共生原理に気がつけば、誰もが家庭料理や自家製の発酵食品に対して特別な愛着が湧く理由にも頷けるのではないでしょうか。